エグゼクティブ・コーチングに学ぶ~1:コーチは意見を言っていい?

決断コーチの、井上由紀です。

最近、たまたま見つけた
「Executive Coaching with Backbone and Heart」
(「【自分軸x心】のエグゼクティブ・コーチング」※井上意訳)
という本を読んでいます。

まだ読み始めて間もないのですが、面白い。

少しコーチングを勉強すると教わる
コーチングの基礎、みたいなところを
ひっくり返す話がいろいろ出てきます。

が、言われてみれば、ものすごく納得のいく内容。

そして、経営者や管理職クラスおよび
そういう人たちとお付き合いがある方には
超実用的です。

ああ~、だからか!みたいな、
「『理屈』と現実との擦り合わせ」が進む感じ。

そんなせっかくの気づきを落とし込むために
この本を読み進めながら、時々このブログで
アウトプットしてみようと思います。

英語を日本語に変換し
さらにそれを伝わるように整理することで
一番学べるのはわたし、という自己中ですが
よろしかったらお付き合いください。

有名な Google の Project Oxygen で
「よいマネージャーはよいコーチである」
とありますが、その意味を
さらに深く理解できるようになるとも思います。

個人的には、この読解シリーズは
特に次のような方々に
興味深く読んでいただけるのではないかな、
と感じています。

・コーチング中~上級者
・ナチュラルコーチ
・No.2 的な立場での経験値が高い
・経営者との関りが深い
・意思決定者(経営者、リーダーなど)

コーチは意見を…言うべき!?

この本では、のっけから
エグゼクティブコーチは

「自分のアイデア、バイアス、挑戦的な提案を、リーダーに示せ」

と言います。

でも、コーチって

「意見しない」
「診断しない」
「アドバイスしない」

のではなかったですか、井上さん?
前回の記事で、そう言ってましたよね?

と思われた、あなた。
いつもブログを読んでくださって
ありがとうございます。

確かに矛盾しているようですが、これは

「コーチングとは、コーチとクライアントの共同作業」

という本質を考えると、答えが見えてきます。

コーチはダンスの男性役

まず大原則として、コーチは
自分の意見や価値観で相手を誘導してはいけない

これは、エグゼクティブコーチでも同じです。

そして、コーチは
「相手の成長と進化に貢献する」

成長と進化は「進行形」ですから
毎回、クライアントの状況は
違っていて当たり前ですね。

そこで、クライアントを支えるため
「自分の言動」を調整することで
相手に影響を与えるのが、コーチです。

もう一つ言えば、コーチの責務は
クライアントのゴールを共有し、
その達成を助けるためのサポートです。

これを社交ダンスに置き換えて
考えてみましょう。

社交ダンスではよく
男性のリードが上手いと
相手の女性は上手く踊れると言います。

コーチはこの男性役を担当します。
そのベースにあるのは
エスコート、という意識。

つまり「主役は女性(クライアント)」。
主役をさりげなくエスコートし、
美しく踊っていただくのが
男性(コーチ)の仕事になります。

「主役に美しく踊っていただく」

これが、二人の共同作業の目的であり
その過程に難易度の高い技を決める、など
具体的な達成目標がある、というわけです。

ではどうやって、というのが「手段」の部分。
ここに来て、ようやく
「コーチは意見するか、しないか」
という話になってきます。

そして、お察しの通り
目的を達成するための手段は
決して一つではありません。

つまり、コーチというのは

・成長、進化を目指す変動的な環境で
・共通のゴール(美しく踊ってもらう)のために
・必要であれば、意見もする

言いかえれば
「意見するかどうかは、ケースバイケース」
ということになります。

ただし、コーチが
「自分の意見に従わせるために」
誘導するのはご法度です。

それは、社交ダンスの男性が
女性を力づくで振り回すのと同じこと。

見た目にも美しくありませんし、
関係性が「共同作業」ではなく
「主従関係」になってしまうので
ベストパフォーマンスは実現できないでしょう。

目的と手段を整理する

「この人を美しく踊らせてあげるために、わたしは何ができるか?」

これを考え、能動的に行う。

目的に沿って、その場に応じた手段を
柔軟に選んで活用すればよい、ということです。

このように理屈だけ書くと
「そうだよね~」
とシンプルに思えるのですが、
難しいのは実践ですよね、何事も。

そして、この原理原則は
エグゼクティブ相手に限らず、
家庭でも職場でも、人と関わる場なら
どこでも応用と実践稽古が可能です。

ただし、前提として
相手との間に信頼関係が無いと
相手にとって耳に痛いことを言ったばかりに
喧嘩になったり拒絶される可能性があります。

なので、きちんと信頼関係を作りながら
その中で「ここは言った方がいいかな」
という所は、勇気を出して伝えてあげる。

エグゼクティブコーチであればなおのこと、
リスクをとる勇気も必要です。

※行動して撃沈「リスクを取って失敗した話」はこちらから

本のタイトルにある「Backbone(気骨)」とは
コーチに必要なこの資質も示唆しています。

また、能動的と言っても
やたらとアクションを起こせばよいわけではなく
能動的に「沈黙する」というのも大有りです。

「自分が言いたいから」
つい、発言しそうになるのを
「相手の成長のために」グッと我慢する。
言葉数を、必要最小限に抑える。

目的は、相手の成長と、パフォーマンスアップです。
あなたが言いたいことを言って
気持ちがスッキリすること、ではありません。

能動的な沈黙。
子育てや夫婦間で大いに修行できますね。
部下や後輩に対しても即応用できそうです。

ちなみに、言うまでもないことですが
腹が立つから無視してやろう、というのは
相手の成長のためではなくて
自分のうっぷん晴らしです。

恥ずかしながらわたし自身、若い頃は
ムカつくと相手を無視しがちな傾向がありました。

しかし「その目的は?」と
考えるようになってから
本当にそんなことに時間と労力使いたい?
と冷静になりやすくなった気がします。

コーチング的アプローチができるということは
「目的と手段」+「相手の進化成長」
という判断基準を持てている、ということ。

そのために、結果として
自分の在り方や振る舞いひとつひとつを
俯瞰しやすくなるのかな、と思います。

まとめ

ということで、今回のまとめ。

コーチは、相手に対して
自分の意見を言ったり
提案をしてもいいのか?

答えは
「相手の成長のために価値ありと判断するなら」
言ってもよい。

コーチは○○すべきかどうか?
このタイプの問いは、
要するにテクニック、手段の話。

「それをする(しない)目的は?」

ここに立ち返れば
答えはおのずと見えてくるだろう、
ということが分かりました。

しかし、実際の場においては
「これ、本当に相手のためになる?」
と迷うことも多いもの。

次回は、その辺をもう少し
事例を挙げながら深めてみたいと思います。


体験セッションをご提供しています

井上由紀と話してみたい、
自分のことを深く見つめたい。

そんな方に、体験セッションをご提供しています。

お申込みはこちらから。